お陽さまは今日もうららかで、それは全ての生き物に平等であるかのようでした。
しかしその空を見上げるでもなく黙々と働き続けるありたちは、
地平線の向こうまで続く行列を更に伸ばしています。
ふと陽が陰りました。雨でも降るのか知らと仰いだ一匹のありが見たのは、
かわいい膝を突き出してしゃがみ込み、
興味深げに瞳をくるくるとさせたようじょでした。
「何してるの?」
つい目を合わせてしまった先ほどのありは、行進の足を止めずに答えます。
「エサを集めているのよ」
「ご飯? お腹が空いてるの?」
「今集めているのはね、今食べるエサじゃないのよ」
「食べないのに集めているの? そんなのばかばかしい、
それよりわたしと遊びましょうよ」
「だめよ、今のうちに働いておかないと、
エサが採れなくなった時に困るじゃない」
ようじょはくすりといたずらっぽい笑みを返します。
「働くなんていや、遊んでいたほうが楽しいもん」
「あとになって泣くことになっても知らないんだから」
「わたし赤ちゃんじゃないんだから泣いたりなんかしないわ。
ほらブランコが空いた、早く行かないと」
ようじょはふっくらと丸い指を差し出しました。
しかしありはその誘いには乗らず、
立ち上がったようじょに倣い形を変えた影の外へと続く
黒い線の一部へと消えて行きました。
それから幾度となくありは幼女の姿を見咎めました。
しかしようじょはのんきに遊び回る一方で、まるで働く様子もありません。
「毎日毎日朝から晩まで働いて、きっとあなたは働き過ぎて死んでしまうのよ」
時にはそんな言葉すら投げかけられましたが、
ありは決して怠けることなくまじめに働き続けました。
やがてお陽さまの季節は終わりを告げます。
木々は葉を落とし、生き物たちは鳴りを潜め、
少しでも凍える空気に触れぬように縮こまる準備を済ませていました。
「さむい……」
お椀の形に合わせた両の手にはぁーと息を吐きかけながら行列を覗き込み、
ずっと西に傾いた日差しを遮るようじょ。
「今日もまたせっせと行進の練習? よく飽きないわね」
「ええそうよ、でもそれも今日で最後。
エサは何とか集まったから、あとは暖かくなるまで巣の中でゆっくりお休みよ」
「それじゃやっとあくせく働かずに済むのね」
ありも今日ばかりは気分を害すよりも、
ようじょがこれから迎える運命を考えて少し悲しくなりました。
「あなたはまだそんなことを言っているの?
これからまだまだ寒くなるのよ、もうエサなんか採れやしないんだから!
どうして暖かいうちに働いておかなかったの!」
小さな口をすぼめ、きょとんとありを見やるようじょ。
「だからあんなにも言ったじゃない。それなのに全然耳を貸さずに遊んでばかりで!
わかってるの? これからあなたはきっと凍えて餓えて、死んでし――」
「今日は冷えるから早くおうちに入りなさい。温かいスープもできてるわよ」
ありのお小言をかき消すように、向こうの家からようじょを呼ぶ女の人の声がします。
開かれた扉の隙間からふわりと、揺らめく暖炉の炎の温もりと、
おいしそうなご馳走の匂いが零れてきました。
「はーい」
元気に返事をし、ようじょは駆けて行きます。
もうちっぽけなありのことなんか忘れてしまったかのように。
しかしようじょは途中で足を止め、駆け戻って来ました。
そして上気しバラ色になった頬を膨らませると、
ポケットから取り出したビスケットをそっとありの傍らに置き、
再び家族の待つ家へと踵を返しました。
| scenario : | ryoki ihu |
| illust : | pechico shiratama |
| page design : | ryoki ihu |